映画 永遠の0 感想 ネタバレあり

特攻隊の是非については明確に「非」しかないので、もう二度とああいう状況を呼び寄せないために何をせねばならないかという政治的な問題は色々とあるはずだけどそういうのを、全部脇に置いておく。
そういうものを全部切り離して、舞台設定の何もかもをフィクション、ファンタジーにすり替えたって、ああいう極限状況におかれた「キュウゾウ」が、何を考えどう行動するかについて考える事はできるし、それこそ僕が興味のある事柄だから。


キュウゾウに伍する者のひとりでも居れば、ああいう結末にはならなかったのではないか。あまりに腕が立ちすぎて、あまりに心が強すぎたから、その苦悩を分け合うことのできる人が居なかった。妻や娘ですら支えにはならなかった。

キュウゾウがもし女性なら、死を選ぶことはなかっただろうと思う。男は身を分けた者の死を背負えるようにはできていない。

殺すために育てるという事、育てる力があるからこそ生かされ続けている事。そういう苦悩の末に自分のこの身を生かしておけないという心境に至ったのだろうか。そう考えるとそれは理解出来るし、そうして自ら死の淵を渡ろうとする時に、自分の意志を継ぐだろう人間を見つけそれを遺していけることは、何より心強かったろうと思う。

彼はきっと最後の最後までやれることをやった。

あの状況を作り出した全てを許せはしないが、あの生き方を貫いた彼を肯定する。